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カタルーニャ州 (スペイン)

2,500年以上前、今ではカタルーニャとして知られる場所に、ギリシャ人が初めてブドウを植えました。後にローマ人がカタルーニャとヒスパニア(イベリア半島のローマ名)中に地元のワイン文化が拡大しました。プリオラート、モンサン、ペネデスにはすべて長いワイン作りの伝統があって、高品質のワイン生産で知られています。

このエリアガイドは、カタルーニャの重要なワイン地域、地勢、土壌、特にすばらしいワインについて知る手助けとなるでしょう。数種類のワインは、今月のワインコレクション(このページの下と、ワインページで特集)の一部としてお楽しみいただけます。

カタルーニャについて

カタルーニャ(地元のカタロニア地方では「Catalunya」)は、三角形の形の自治州で、イベリア半島の最北東の角にあり、東は地中海、北はフランス、西・南はスペインと面しています。美しく、活気がある国際的なバルセロナは地域の首都で、このすばらしい都市を訪問することがあるなら、地元のワイナリー訪問は必須です。

カタルーニャ州

カタルーニャの豊かなワインの歴史は、現在のワインを通じて輝いています。モナストレルやチャレッロなどの地元のブドウが多数使われ、100年以上前に植えられたブドウ畑は今日でもまだワインを生産しているんです!カタルーニャは最も有名なスペインのスパークリングワイン、「カバ」も生産しています!カバは、シャンペン同様、伝統的な方法で作られていますが、代わりに地元の白ブドウ種を使用しています。

ワイン原産地は、ヨーロッパ諸国ではとても重要で、他のワイン生産国同様、スペインは原産地呼称制度を発展させてきました。モンサンとペネデスの両方ともDO、つまり「原産地呼称ワイン」に登録され、一方でプリオラートは、スペインワイン最高品質のカテゴリーDOC、つまり「特選原産地呼称ワイン」に属しています。

気候

地中海に隣接するカタルーニャの気候は、もちろん地中海の気候です。つまり、夏は暑く、長く、乾燥しています。風は強いことが多いのですが、本土に涼しい海風をもたらずので、ブドウ栽培にはメリットがあります。雨は少なく、ほとんど冬季・春季に降ります。毎年、大量に熟したブドウが確実に作られるので、全体的に、条件は高品質のワイン生産に非常に向いています。.

 

カタルーニャワイン産地

カタルーニャの気候で最も大きな変動は、高度です。プリオラートなどの山にあるブドウ畑や、さほど広くないモンサンなどは、ペネデスよりも気温が低くなっています。しかも、地域の温度は夏には全体的に30度以上になることがよくあります。ですが、心配しないでください。使用される地元のブドウは、こういった暑くて乾燥した条件に慣れていて、実際に、最大の潜在性を達成するために依存しています!

プリオラート

プリオラートは、カタルーニャの南部、タラゴナ市の近郊にあります。この地域の沿岸の山脈を曲がりくねって運転して行くと、グラタヨップス村のDOCにたどり着きます。景色はすぐに人目を引きます。一面に植えられたブドウ畑の所の急な斜面、その後ろには高い峰があります。多くの小さな村やコミューン(自治体)があるこの過疎地区は、最も重要で非常に評価の高いヨーロッパのワインを生産しているのです。

 

Terraced slopes in Priorat

プリオラートは、品質指定という点で、スペインワイン地域のトップ2のひとつで(もうひとつはリオハ)で、ワインはDOC(特選原産地呼称ワイン)が与えられています。プリオラートは1954年以来DO(原産地呼称ワイン)を確立しており、ワインは、大抵はガルナッチャとカリニェナ(フランス語でカリニャン)のブレンドです。

土壌

熱を反射・保護する雲母とケイ石の小さな粒子が入った、炭素を生じる赤と黒のスレート状の土壌であるリコレラは、地域の主な土壌タイプです。水が流れ出ません。つまり、大抵の冬の降雨は、成長時期にブドウには利用できないということです。

 

リコレラ土壌

ブドウ畑は、南に面した急な斜面に太陽に向かってブドウが植えられていて、ブドウが熟するのに役立ちます。この地域の急な斜面はブドウ畑と森に点在し、かなりシュールなセッティングを作り出しています。

プリオラートのワイン

土壌は、プリオラートワインメーカーにとって最高の役割を果たします。最小限の降雨と温暖な気候と併せて、乏しい産出力のために、プリオラートワインはとても独特なものとなっています。ワインメーカーは、フランス語では「グルナッシュ」と呼ばれる、気候や土壌によく適応するガルナッチャ種を使います。濃いイチゴの特徴とほんのりと地中海ハーブが香るワインを作り出します。

プリオラートワインでは、普通はさまざまなブドウをブレンドします。多くのブドウを使うことができますが、カリニェナ(隣接するフランスでは「カリニャン」)が一番共通するブドウです。ですが、ワインメーカーは、カベルネ・ソーヴィニョンやシラーなどのその他のクラシックな品種に移ってきています。これらのフランスの品種は、ワインでは世界中で有名で、プリオラートブレンドに豊富なタンニンと黒い果実の成分を与えます。

 

Celler Ardèvol のオーナー Josep and Albert Ardèvol

プリオラートワインのワインメーカーの影響は、「テロワール」と同じぐらい重要です。ワインは、力強い香りを出すためにしっかりと抽出されます。ですが、これはタンニンも抽出するので、オーク熟成を取り入れて、タンニンを和らげます。ヨーロッパとアメリカの両方のオークが使用され(これは違うオーク樹種です)、熟成していない時にワインを飲みやすく、柔らかくするだけではなく、バニラ、ココナッツ、クローブなどの特殊な香りをワインに加えます。

プリオラートワインにはパワー、洗練性、エレガンスさがあるので、皆さんもこのカタルーニャワイン地域の熱烈なファンになるでしょう。

モンサン

モンサンは、プリオラートエリアをほぼ完全に囲んでいます。プリオラートの弟と考えられることが多く、比較的近年の2001年に確立されました。とても近いのですが、この2つの地域の違いは、小さいながらもかなり重要であるということです。

 

モンサントワイン産地

ガルナッチャとカリニェナが主に使用されますが、テンプラニーリョと、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、シラーなどの他にもっと知られているブドウもローカルの赤ワインに含まれています。

気候

モンサンの気候は、カタルーニャの残りの地域同様に地中海の気候です。ですが、ブドウ畑はプリオラートよりも低い高度にあり、このために、この地域は全体的に少しだけ暖かめです。しかも、多くのブドウ畑は谷底にあるので、プリオラートの南に面した斜面と比べると日当たりが良くありません。

土壌

プリオラートと同じように、斜面の土壌は水や栄養をあまり保持しません。古いブドウ(50~100年)は、水分を求めて、20メートルの深さまで岩の中に根を張ることができます。この独特な特性が、ワインの質の一因となっています。ワインは非常に濃厚ですが、ワイン製造は高価で、利益は低めです。

 

The vineyards of Can Blau

ですが、モンサンエリアはプリオラートほど険しくありません。斜面に植えられたブドウ畑もありますが、大抵は谷底にあります。そこの土壌はリコレラよりも豊かで、粘土含有量が多く、もっと高い場所で見つかります。つまり、水をもっと吸収して、植物にもっと栄養を与えるということです。谷底で成長したブドウから作るワインは、丘で作られるワインよりも濃厚ではありませんが、一般的に飲みやすく、熟成する前に楽しむことができます。

モンサンのワイン

モンサンは、赤ワインの地域です。1,900ヘクタールのブドウ畑のうち、約95%に赤ワイン品種が植えられています。面積の35%にガルナッチャ(グルナッシュ)、大体30%にカリニェナ(カリニャン)が植えられ、それにカベルネ・ソーヴィニョンやメルローなどのクラシックなボルドー品種のほか、シラーなどの他のブドウが続きます。
グルナッシュ・ブランは、地域で最もよく植えられている白ワイン品種で(55%)、それにマカベオが続きます(39%)。

作られる赤ワインは、イチゴやチェリーの香りが多く、濃厚、フルーティです。地域の気候や土壌条件のおかげで、楽しむために長く熟成させる必要はありません!モンサンのガルナッチャは、芳醇な酸味があって、口になめらかです。少し冷やして12~15度で召し上がると最高の良さが引き出されます。

ひとつの品種のガルナッチャに加え、プリオラート同様、多数のブレンドワインも作られています。カリニャン、カベルネ・ソーヴィニョン、シラー、そしてメルローもブレンドに使用される主な品種です。生産者は、自分たちでこれらのブドウをボトル詰めすることを好みます。これらを一緒にし、モンサンはとても多様なワイン地域になっていて、本当に探索する価値があるのです!

ペネデス

ペネデスは、カタルーニャの大部分を占める大きなDOです。スペインで最も重要なワイン生産地域のひとつで、首都バルセロナと小さなタラゴナの間にあります。ペネデスの緩やかな丘は海に近いのですが、ウラル山脈が地中海からのバリアとして役目を果たしています。一方で、モンセラート山の高峰が地平線にそびえています。

このエリアでは、赤、ロゼ、白など、多数のさまざまなスタイルのワインが製造されています。ですが、スパークリングワインの「カバ」は、間違いなく最も重要です。鍵となるブドウ品種は、赤ワインとロゼワインでは、ここでもガルナッチャとカリニェナ。一方、白ワインとスパークリングワイン製造には、パレリャーダとチャレッロが使われます。

気候

ペネデスの気候は、典型的な地中海です。ですが、ウラル山脈が大抵の強風と、谷に入り込む海からの湿気を遮ります。この両方が、ブドウ栽培の潜在的な脅威を引き起こします。強風は若い新芽をはぎ取り、一方で高湿度のために、健全なブドウを作るのにもっと噴霧する必要となります。現在、ペネデスはスペインで最も重要なオーガニックワイン地域のひとつです!

 

美しいペネデス

ペネデス地域のさまざまな高度のために、独特な微小気候が起こります。この理由のために、この地域は3つのサブゾーンに分けられています。バッシ・ペネデスは海岸に近く、中心の谷はペネデス・セントラル、最後に高度が高く、海から一番離れた所(つまり、一番涼しいところ)はアルト・ペネデスと呼ばれています。

土壌

一般的に言えば、土壌は4要素、カルシウム、粘土です。有機物質では乏しいかも知れませんが、ブドウ畑が低収穫になるので、これはワイン生産に理想的な土壌です。その結果として、高品質のブドウができます。この地域の不十分な夏の降雨と温暖な気候を併せると、ブドウ畑にはわずかな水しか利用できませんが、いずれにしても、これが好きな方法のようです。

ペネデスのワイン

ペネデスは非常に多様なワインの地域。赤ワインだけではなく、ロゼ、白、スパークリングワインも製造します。赤ワインは地域のブドウであるガルナッチャとカリニェナだけでなく、テンプラニーリョ、カベルネ・ソーヴィニョン、シラー、マルローも使われ、この地域でとても成功しています。ガルナッチャとカリニェナは好まれませんが、フルーティで濃厚、淡い色のロゼを作るので、ロゼワインはこれらすべてのブドウから作られます。

ローカルの白ワインのブドウであるマカベオ、チャレッロ、パレリャーダは、コスモポリタンのシャルドネと併せて、非発泡性白ワインとスパークリングワインの両方で多数を占めています。これらのブドウは酸味が強く、温暖な気候のために特徴がなく、桃、ホワイトフラワー、グリーンハーブの独特な香りがあるので、この地域のワインは非常に評価され、引っ張りだこです。

カバ

最も知られているスペインワインのひとつはカバです。スペインの多くの地域でカバを作る許可が下りていますが、ペネデスは生産の中心であると考えられています。ペネデス中心にあるサン・サドゥルニ・ダノヤ村は、大小あるカバ生産者の本拠地で、全体的な環境はシャンペンのエペルネーを思い出させます。ローカルのレストランはバーでは終日、泡が流れています!(この陽気なスペインの村々に皆さんをお連れする目的で、今月の各ワインセットにはカバが入っていますよ!)

カバワインは、製造方法はシャンペンによく似ています。まず、非発泡性の白ワインを作ります。シャルドネが使われることが増えて来ていますが、一般的には、マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ(伝統的なカバのブドウ品種)のブレンドです。

次に、ワインは少し砂糖とイーストを加えてボトル詰めされます。これによって、もう一度、二度目の発酵が瓶の中で始まります。発酵すると、アルコールに加えて炭酸ガス(CO2)が作られますが、これは瓶の中に閉じ込められて、ワインの中で溶解が進みます。瓶を開けると、ゆっくりと美しい泡がグラス、そして私たちの口の中に放出され、ワインに追加の爽やかさと遊び心を与えます。

ペネデス特有のカバのタイプのひとつは、コルピナット。コルピナットは2017年に登録されたエクセレンスラベルで、名前は単語の「cor」(カタロニアの中心)と、原産地名の「ペネデス」を指す語源的なルートのPinnae由来の「Pinnat」で構成されています。この総合ブランドは、ペネデス中心のワイナリーを取り囲み、ワインは手摘みで収穫された100%オーガニックのブドウから作られ、完全に地所でワインにします。今月の「Enthusiast」と「Aficionado」セットにはそれぞれ、名高いワイン生産者の「Sabaté i Coca Mosset Brut Nature」のコルピナットカバが入っています。

食事の組み合わせ

伝統的なカタロニア料理は多様で、地域内陸部の豚肉の料理から海岸沿いの魚や魚介類ベースのレシピまでさまざまです。お肉とお魚はよく組み合わせられ、「mar i muntanya」として知られるカタルーニャ版のサーフ・アンド・ターフがあります。お料理の例を挙げると、ロブスター付きチキン(pollastre amb llagosta)、ザリガニ付きチキン(pollastre amb escarmalans)、肉と魚介類添えライス(arròs mar i muntanya)などがあります。

料理には、甘辛ミックスの多数の料理、ブティファラ(ポークソーセージ)をベースにしたソースのシチュー、特徴あるピカーダ(アーモンドプードル、ヘーゼルナッツ、松の実など。時々、ニンニク、ハーブ、ビスケット付き)などがあります。

白マメ添えブティファラ

ブティファラ添えビーンズは、典型的でシンプルなカタロニア料理で、素材の質が料理のおいしさの決め手です。とても上等な柔らかい豆であるインゲンマメ(ganxet)などの良質な豆をうまく調理してこの料理に使いますが、他の種類の豆も使用できます。

一番基本的なブティファラは、カタロニアのポークソーセージですが、多数の種類があります。ブティファラ・カタラーナは、ピンク色の赤身ソーセージで、ブティファラ・デ・ペロールは頭と肩の肉とベーコンで作られ、臓物や血が入ることもあります。味が濃く、ブティファラ・カタラーナよりも脂っこい傾向があります。

今月のワインセットに入っているワインなど、フルボディの赤ワインとこの料理を組み合わせましょう。

フィデウア

フィデウアは伝統的な郷土料理。フィデオスという短い乾燥パスタで作られます。イタリアスタイルでパスタを茹でる代わりに、カタロニア風では、幅広のカスエラ鍋かパエリア鍋に入れて、少量の液体で調理します。まず、パスタをオリーブオイルで炒め、それから濃い魚介スープで煮ます。リゾットとパエリアの間のような料理で、ブイヤベース系の地中海風フィッシュスープが好きな人にピッタリのお料理です。スープは吸収されるので、合間に加え、スープが最小限になるまでかき混ぜ続けます。いただく前に各スープ皿にアリオリ(aioliのスペイン版)を加えます。

おいしいカバや、(それよりも良い)コルピナットと一緒にフィデウアを楽しみましょう。

まとめ

カタルーニャワインの歴史は長く、ストーリーがあります。現在、スペインのトップワイン地域のひとつであるプリオラートのほか、モンサンエンポルダなど有望なDOなどの本拠地です。この国が提供する最高のスパークリングワインはペネデス原産で、国際的な注目・名声を集め続けています。多様なブドウの品種がここでは見つかり、ガルナッチャとカリニェナなどのローカルなものから、シラーやカベルネ・ソーヴィニョンなどの国際的な品種もあります。すべてのブドウがテロワールの厳しい土壌で力強く育つようで、プリオラートのオーク熟成赤ワインや、モンサンのもっと果実を重視したワインなど、すばらしいワインを製造することができます。今月は、私たちと一緒にそのワインを楽しみましょう!