戻る

コロンビア・バレー(ワシントン州)

In Brief

コロンビア・ヴァレーのワインは、とにかく素晴らしい

  • 米国最大のAVAのひとつ。ワシントン州のワイン生産量の99%を占め栽培面積は16,000ha
  • 1860年代に最初の植樹。1987年にAVAとして承認。
  • 主なブドウ品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロー、シラー、リースリング
  • ワインスタイル:カスケード山脈によって冷涼な海の影響から守られた非常に乾燥した砂漠地帯で育ったぶどうにより力強く完熟度が高い

地形と気候

初めて夏にサンフランシスコを訪れる人の中には、長袖を持たず軽装でビーチに出かけた人もいるかもしれません。実際は8月でも日中の気温は平均20度、夜になると13度にまで下がるのです。 太平洋の冷い霧は、海岸沿いのブドウ栽培を特徴づける重要な気候特性です。 海岸に近ければ近いほど、その影響は強く、冷涼なブドウ品種が多くなります。(ソノマ・コースト、ロシアン・リバー・ヴァレー:シャルドネ、ピノ・ノワール)内陸部に入ると、海の影響は弱まり、より暖かさを必要とするブドウ品種が増えていきます。(アレクサンダー・ヴァレー、ナパ・ヴァレー、パソ・ロブレス、ロダイ:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、ジンファンデル)。カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、ジンファンデル)

海の影響は、さらに北上したオレゴン州にも及びます。この地でのワイン造りの中心地はウィラメット・ヴァレーです。 海からの冷涼な影響を受けた気候は、ブルゴーニュスタイルのピノ・ノワールやシャルドネの生産に最適な条件をもたらします。

さらに北上してワシントン州に入ると、話はまったく違ってきます。ワシントン州のワイン用ブドウのほとんどは州の東部で栽培されています。 ワシントン州のワイン用ブドウのほとんどは州の東部で栽培されています。 ここではカスケード山脈によって沿岸部からの影響が完全に遮断され、ほとんど雨の降らない砂漠地帯となっています。 夏の日中は暑く、1日の日照時間は約17時間。世界のワイン産地の中でも最も強く日周運動の影響を受けるため、ブドウの成熟がゆっくり行われ、しっかりとした酸味をもたらします。 コロンビア・ヴァレーは、1日の日照時間が2時間、他より長いにもかかわらず、積算温度は1,700日*しかありません。これは、緯度が似ているボルドーと同程度で、ナパ・ヴァレー(2,000)などと比べるとかなり少ないです。

カスケード山脈はレインシャドウ(雨蔭)の役割も果たしています。沿岸部の年間降雨量は平均356cmですが、ワイン産地ではわずか15〜20cmしかありません。 (ボルドー58cm、ナパ・ヴァレー44cm)つまり、地元の川からの灌漑が不可欠なのです。 また川が作り出す空気の流れは、冬から春先にかけての極寒な気候を和らげるのも役立っています。

これらの要因により、完熟した果実味と様々なフェノール(フレーバー要素を意味する洒落た言葉)を持ち、フレッシュで瑞々しい柔らかなタンニンのワインが出来るのです。

土壌

15,000年前のある日、運悪くコロンビア・ヴァレーに住んでいたのであれば、人であれ動物であれ、まさに大災害を経験した事でしょう。ミズーラ氷河湖の水をせき止めていた、高さ400メートルのアイスダムが崩壊し、100メートルの高さの津波が時速100キロで押し寄せ、ノアの箱舟規模の大洪水が発生したのです。

洪水の水はやがて引いていき、その跡にはミズーラ洪水堆積物と呼ばれるシルト、砂、 砂利の厚い土壌が火山性玄武岩の厚い岩盤の上に堆積しました。 この土壌は栄養分に乏しく、水はけが良く分厚いため、ブドウの木の根が栄養分と水を求めて深く伸びることになり、結果としてブドウの栽培には最適となりました。 (肥沃な土壌に植えた場合、ブドウの木は果実への栄養を犠牲にし、すべてのエネルギーを葉や木の成長に集中させてしまいます。 <だからこそ> ワインブドウ栽培の世界では栄養価が低く植物が成長しにくい土壌が好まれます。 世界中の銘醸地はこのような土壌です。)

Wine is one of the most civilized things in the world and one of the most natural things of the world that has been brought to the greatest perfection, and it offers a greater range for enjoyment and appreciation than, possibly, any other purely sensory thing.

Ernest Hemingway つぶやく

主要AVA

AVAとはアメリカン・ヴィティカルチャル(ブドウ栽培)エリアの略で、ヨーロッパのPDOに相当するアメリカの分類システムですが、AVAのルールはそれほど厳しくありません。 AVAは主にラベル表示の要件を定めたもので、例えば「ヤキマ・ヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨン2020」と表示した場合、ワインの一定以上の割合が実際にヤキマ・ヴァレー産であり、カベルネ・ソーヴィニヨンを使用し、記載されたヴィンテージで栽培されたブドウを使用しなければならないというものです。 一方、ボルドーのような伝統的な産地では、植えられるブドウの種類、1ヘクタールあたりの植樹本数、収穫時のワインメーカーの服装など、あらゆることが規定されています。

コロンビア・ヴァレーAVAとそのサブAVAは、ワシントン州のワイン生産量の約99%を占めています。 栽培されている主な品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロー、リースリング、シラーです。 コロンビア・ヴァレーにはいくつかのサブAVAがあり、それぞれに微気候、主要なブドウ品種、特徴があります。 ヤキマ・ヴァレー(ボルドー・ブレンド)、ワラ・ワラ・ヴァレー、レッド・マウンテン、コロンビア・ゴージュ、ホース・ヘブン・ヒルズ(草に覆われたなだらかな丘陵を、初期の開拓者が「馬の天国」と宣言したことに由来)、ワールーク・スロープ、ラトルスネーク・ヒルズ、レイク・シェラン、レッド・マウンテン、ナチェス・ハイツ、エンシェント・レイクス・オブ・コロンビア・ヴァレー、ルイス・クラーク・ヴァレー、ロイヤル・スロープ、キャンディ・マウンテン(ワシントン州最小のアペラシオン)、ザ・バーン・オブ・コロンビア・ヴァレー、ホワイト・ブラフ、グース・ギャップ。

ブドウ品種

わずか4品種で全体の70%以上を占めます。

  • カベルネ・ソーヴィニヨンとボルドー・ブレンド 34%
  • リースリング 15%
  • メルロー 11%
  • シャルドネ 11%
Chardonnay is a regal grape for its role in producing the greatest dry white wines in the world

 

ワインスタイル

: 適度な酸味があり、リンゴや核果のような果実味を持つフレッシュなワイン。

ロゼ: フレッシュでフルーティ、赤い果実とハーブの香りが特徴で辛口のフィニッシュ。

: ミディアムからフルボディのフルーティなワインで、赤や黒のフルーツの風味があり、タンニンは中程度。

この地域の最高のワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンとボルドー・ブレンドから作られています。 シラーは今後の注目株です。

10の主要生産者とワイン

オー・カテゴリー ・シラー・ワラ・ワラ・ヴァレー
オー・カテゴリーは、ワラワラ川の北分岐に沿った急斜面に2011年に最初に植えられたブドウ畑です。 ブルー・マウンテンズの麓に隠れたオー。カテゴリー・ヴィンヤードは、北支流がワラワラ本流に合流する場所にあります。 シラーのブドウの木は、ゴツゴツした崖の下の丘の斜面にしがみつき、岩の露頭に囲まれており、 その根は割れた玄武岩の中で栄養を得ようと奮闘しています。 この割れた玄武岩からの果汁には、400ドル以上の値段がつくことでしょう。

クィルシダ・クリーク
クィルシダ・クリーク は、コロンビア・ヴァレーにある自社畑から、長期熟成に適したカベルネ・ソーヴィニヨンでプレミアムワインを生産しています。 このワイナリーは数々の賞を受賞しており、州内で最も優れたワイナリーのひとつとされています。

カユース・ヴィンヤーズ
カユースは、ワラワラ・ヴァレーの石の上にあります。 ワインの原料となる果実は、すべてバイオダイナミック農法で栽培されています。 バイオニック・フロッグ・シラー、カマスペロ、フライング・ピッグ、ゴッド・オンリー・ノウズ・グルナッシュ、インプルシーヴォ・テンプラニーリョ、ザ・ラヴァーズ、ウィドウメーカー・カベルネソーヴィニヨンなどの刺激的な名前で、毎年少なくとも12種類の評価の高いワインを造っています。 このワインを手に入れたい人は、残念ながらメーリングリストに登録するしか手段がなく、長い待ち行列ができています。

ホースパワー・ヴィンヤーズ、ワラワラ
馬の心を通わす人々のワイン。 ホースパワー・ヴィンヤーズはカユースと同じオーナーですが、そのワインはより入手しやすいものとなっています。 農法はカユースと同様にバイオ・ダイナミックですが、ここでは6頭の馬とそのチームメンバーが、ブルゴーニュの鍛冶屋が作った特殊な農具を使って、彼らだけが操れる19世紀スタイルのブドウ畑の狭い畝を耕しています。 このワイナリーでは、シラーとグルナッシュの品種を生産しおおりトップは、高密度に植えられた畑で作られる ”シュール・エシャラ・ヴィンヤード・シラー”。このワイナリーでは、シラーとグルナッシュの品種を生産しおおりトップは、高密度に植えられた畑で作られる ”シュール・エシャラ・ヴィンヤード・シラー”。

チャールズ・スミス

イヴ・シャルドネ、カンフー・ガール・リースリング、ベルベット・デビル・メルロー、バンド・オブ・ローゼズ、ブン・ブン・シラー、シャトー・スミス・カベルネ・ソーヴィニヨン。

チャールズ・スミスは、ヨーロッパで11年間ロックバンドのマネージャーを務めた後、ワラワラに移り住み、わずかな資金でワイン造りを始めました。

今でも彼のワインからは、彼のルーツであるロックンロールの興奮が伝わってきます。彼のワインは、真摯な品質と優れたコストパフォーマンスに裏打ちされており、米国の著名なワイン専門誌であるワイン・アドヴォケイト誌やワイン・スペクテーター誌で、何百もの90点以上のスコアを獲得しています。

レオネッティ・セラー

レオネッティ・セラーは、今から35年以上前に設立されました。主にボルドー・ブレンドのワインを少量生産しており、複雑で熟成能力の高いワインを提供しています。

ノー・ガールズ ラ・パシエンシア・ヴィンヤード

カユース・ヴィンヤーズとのコラボレーションであるこのワインは、カユース・ヴィンヤーズのアシスタント・ワインメーカーであるエリザベス・ ブルシェによって造られた、女性の社会進出を祝うワインです。 ワラワラのラ・パシエンシアのブドウを使用しています。

ウッドワード・キャニオン

ウッドワード・キャニオンは、1981年にワラワラAVAに設立された、レオネッティに次ぐ2番目のワイナリーです。畑や醸造の各工程に細心の注意を払い、「量より質」という哲学のもと、テロワールを感じさせる手作りのワインを生み出しています。

デリール・セラーズ グラン・シエル カベルネ・ソーヴィニヨン レッドマウンテン

ロバート・パーカー氏にとって十分なワインであれば、多くの人にとっても十分なワインです。偉大なワイン評論家は、このワイナリーを「ワシントン州のラフィット・ロートシルト」と呼んでいます。 デリール・セラーズは、ボルドー・スタイルのエレガントなワインを手作りすることに専念しており、手作業で選別した最高級のブドウの房だけを使ってワインを作っています。すべてのワインは、フレンチオークの新樽で熟成され、無濾過でボトリングされます。 デリールは、オークションでワシントン州のワイン1本につけられた最高額の記録を打ち立てました(1997年に16,000ドル)。

パースード・バイ・ベアー

この言葉はシェイクスピアの「冬物語」の第3幕に出てくる「熊に追われて退場」という歴史上最も有名なト書きのひとつで、アンティゴヌスは残酷な死に方をします。

俳優のカイル・マクラクラン(『ツイン・ピークス』、『ブルー・ベルベット』、『ドアーズ』など多数の映画に出演)は、ワシントン州のコロンビア・ヴァレーというワイン生産地の出身です。 彼がワインに興味を持ち始めたのは、俳優としてのキャリアを求めてロサンゼルスに移住した1980年代半ばのことでした。  彼は、地元のテロワールを表現したカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーを造ろうと決め、その後ワラワラ州を代表するワインメーカー、エリック・ダンハムと偶然の出会いを通じ友人となり2005年にパースード・バイ・ベアーを設立しました。 私たちの知る限り、カイル・マクラクランはまだベアに追われたことはありません。

* 積算温度とは、カリフォルニア州デイビス大学が開発したワイン産地の温度測定システムです。このシステムは、ブドウは10℃以下では成熟しないという前提に基づき、生育期間中の1日の平均気温が10℃を超えた分を積算温度とし測定し、生育期間中の合計数を出します。ブドウ畑は、その積算日数によって分類されます。例えば、フランスのシャンパーニュ地方では、1,000度で1aと分類されています。

キーポイント

気候:乾燥した大陸性気候で、1,700日の日照時間があり、カスケード山脈の雨蔭効果により年間150~200mmの雨が降る。

ブドウ栽培における問題点:冬の氷結

土壌:火山性玄武岩の岩盤にシルト、砂、砂利が重なっている。

主要なブドウ:カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロー、リースリング

スタイル:重厚で完熟した果実のフレーバー、中程度のタンニン 

主なサブAVA :ヤキマ・ヴァレー、ワラ・ワラ・ヴァレー、ホース・ヘブン・ヒルズ