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ルーション(フランス)

春めいてくると、思考回路も軽くなりますね。今月私たちは南フランスのルーションに旅をするといたしましょう。ルーションは過去数か月に楽しんでいただいたワインよりも力強さは控え目のワインを生み出す産地で、爽やかではつらつとたワインを生産しています。スペイン、カタルーニャ州の力強い赤ワインのことを覚えていますか?今月はそれとは異なった体験をするといたしましょう。4月はピクニックや縁側に持って行きたくなるような、春の陽気と新鮮さを感じるワインを選びました。

ルーションについて

これまでフランス国外ではあまり知られていなかったルーションが、世界中のソムリエやワイン愛好家から関心を集めています。独特のミクロ・テロワール、古樹からの非常に優れたブドウ果実、良質に培われたブドウ栽培のノウハウなど、この南フランスの産地が人々を引きつける要因は多数あります。

オーガニック栽培とバイオダイナミック農法ワインに注目をしている多くの革新と創造性あるワイン生産者たちが、この産地に新たな活力をもたらしています。ルーションは魅力的かつ評価の高い辛口の白ワイン、ロゼワイン、赤ワインを提供し、特に世界的に名高い天然甘口ワイン(ヴァン・ドゥー・ナチュレル)や酒精強化ワインの産地として知られています。オーガニック栽培とバイオダイナミック農法によるブドウ栽培に力を入れており、それらの農法を採用しているブドウ畑の割合はフランス国内でもトップクラスです。

土壌

ルーションはさまざまなワインとテロワールに特徴づけられた土地です。その地形は、ピレネー山脈からコルビエール山まで広がり、地中海沿岸に沿って円形競技場のような形状をしています。年間平均325日が晴天で、フランスで最も乾燥し暑い地域です。ルーションは夏は暑く、秋と冬は温暖な気候です。降雨は秋と初春にかけて蓄積されます。ルーション特有の土壌とミクロ気候により、24種類のブドウ品種がこの土地を最大限に表現します。

歴史

過去に私たちが探求したいくつかのワイン生産地と同じく、ルーションのブドウ栽培は紀元前7世紀にギリシャ人によって確立されました。当時、コリントからやってきたギリシャ人商人は鉄の取引で利益を得て、スペインとの国境近くに位置するコート・ヴェルメイユに移住してきた際にブドウの木も持ち込みました。

今となってはおなじみの流れですが、ルーションでのブドウ栽培は後に、ナルボンヌに進出するローマ人によってさらに発展します。ナルボンヌはローマ帝国におけるガリア4州のうちの一つで、その後長期に渡ってワイン交易の中心地でした。

13世紀以降、ルーションのワイン交易は南方はカタルーニャ、東はイタリアに広がりました。13世紀から17世紀にかけては、スペインのマヨルカ王国とアラゴン王国がこの地域を支配していました。この当時、ルーションにとってワイン造りは不運な時期でした。それにもかかわらず、ルーションワインの評判は時代とともに成長を遂げていきます。主な都市に輸出されるのほとんどは甘口ワインでした。甘口ワインは輸送に向いており、味も特徴的であるため輸送費をカバーするため高値で取引されました。

ルーションがフランスの一部になったのは1659年のことでした。今にいたるまで、この地の多くの人々自身はカタルーニャ人であると認識しています。

ブドウ品種について

ルーションで普及している白色、グレー、黒色の24のブドウ品種のうち、17品種がAOP(原産地呼称保護)ワインのブドウ品種として認定されています。グルナッシュ・ノワールが最も広く栽培されているブドウ品種で、次いでシラー、カリニャンが続きます。これらはルーションのAOP(原産地呼称保護)とIGP(地理的表示保護)辛口赤ワインを生産するブドウ品種として重要な役割を担っています。グルナッシュ(黒、白、グレー)は、バニュルス、モーリー、リヴザルトで生産されるヴァン・ドゥー・ナチュレルの主要ブドウ品種でもあります。

ルーションはフランスで最古のグルナッシュが存在する地域であると主張しており、実際この地域の38%の生産量をグルナッシュが占めています。それにしても魅力的なのは、ルーションで黒、白、グレーと三色のグルナッシュを特徴づけていることです。この三色のグルナッシュから味わい深い辛口の白ワイン、赤ワイン、ロゼワインだけでなく、伝説的な甘口ワインを世に送り出しています。

コート・デュ・ルーションの赤ワインは少なくとも3つのブドウ品種を使用しなければなりません。主要2品種の合計はブレンド全体の90%を超えてはならず、カリニャンの使用比率は60%以下と規定されています。

バニュルスは、酒精強化のデザートワインとしてルーションで13世紀から生産されてきました。グルナッシュの異なる品種が主体で、カリニャン、ミュスカ(少量のみ)、マカブー、ムールヴェードル、トゥルバの使用が許可されています。

AOP(原産地呼称保護)の辛口ワインでは、次の品種から2品種もしくは3品種を使用してブレンドされます。グルナッシュ・ノワール、グルナッシュ・グリ、カリニャン・ノワール、カリニャン・ブラン、サンソー、ルドネール・プリュ、ムールヴェードル、シラー、グルナッシュ・ブラン、マカブー、マルヴォワジー・ド・ルーション、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴェルメンティーノ、ヴィオニエ

ルーションの辛口アペラシオン分布

AOP(原産地呼称保護)酒精強化甘口ワインは、グルナッシュ・ノワール、グルナッシュ・ブラン、グルナッシュ・グリ、マカブー、マルヴォワジー・ド・ルーション、ミュスカ・ア・プティ・グラン、ミュスカ・ダレクサンドリーからブレンドもしくは単一品種の使用が認められています。カリニャン・ノワールとシラーは補助品種として使用されます。

今後の展開

ルーションは高級甘口ヴァン・ドゥー・ナチュレル(VDN)の産地として知られていますが、優良辛口ワインの生産地としても知られるようになってきました。フランス料理、イタリア料理、アメリカ料理、アジア料理と世界で最も人気のある料理との相性の良いワインを求め、アメリカをはじめとした世界の市場から継続的な需要が続いて輸出は毎年右肩上がりです。外国人からの投資も、ルーションワインの品質向上と世界市場への流通を支えています。ルーションワインの未来は実に明るいものと言えます!